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あてがわれた船室。固くて狭いベッド。しわくちゃで汚いシーツ。

ひどい部屋だ。でも、私だって相当酷い。顔も洗っていない。髪の毛は埃だらけ。服だって汗まみれ。そう思ったら、もっと気持ちが刺々しくなってきた。悔しくて、おもいっきり叫びたくなる。口を大きく開けて、とにかく声にならない言葉が出てきそうになった。

微かに外から声が聞こえてきたのはそんなときだ。


「どういうつもりだよ! 女の子を巻き込むなんて、何を考えているんだ!」

「あのときは仕方なかった……いいや、完全に俺の判断ミスだな。あの子はその巻き添えをくらっただけだ」

「そんなことくらい分かっている。今はお前を責めているんじゃない。これからどうするつもりなのか聞いているんだよ、シン!」

「じゃあオーストラリアで下船したら、現地のレジスタンスに頼んで……」

「間違いなく断られるね。こっちのミスを押し付けるなと言われるのがオチだよ」

「じゃあ、何とか金を工面して自分で戻ってもらうとか」

「渡航許可証はどうする? IDカードだって持っていない。唯一使えそうな携帯端末は海の底だ。そんな人間が真っ当に入国できるか少しは考えてから物を言え……まったく、そもそもオーストラリアは、レジスタンス活動が活発だと目を付けられているんだぞ? そんな土地から簡単にオーブに入国できる方法があるなら、この作戦で使っているさ」

「なら、どうしたらいいんだよ、コニール」

「私に聞くな!」


仲の良い兄妹が喧嘩しているような口調が奇妙に私の心を和ませた。そして不思議だったのは、その会話から、二人が真剣に私の身を案じて、オーブに戻してくれようと懸命に考えていることを、私が簡単に信じてしまったことだった。

気付けば、私の気持ちはすっかり落ち着いてしまっている。ふと視線を向けた船室の窓から星空が見えていた。いつも学生寮の窓から見ていた星空と変わらない。でも、今は海の上、私の居るのはまったく違う場所。

あまりに色んなことがありすぎて、何が起こっているのか自分でも理解できていない。ただ一つ分かっているのは、私がとても疲れていること。

お風呂に入りたいな……そう考えたのを最後に、私は瞳を閉じて、そのまま深い眠りについていた。

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