はじめに[]
- ユウナ
- じゃ、お願いねー
- サイ
- 判りましたよ、ちゃんとレポート上げときます。
- シゲト
- どしたの?
- リーダーになんか頼まれごと?
- サイ
- ダストにビームシールド着けてくれって。
- ミハシラで新規開発したヤツらしい。
- シゲト
- え?!ムチャだよ!バッテリーギリギリじゃん!
- サイ
- 確かに、防御装置としては強力な部類に入るんだけどな。
- 軽量化にも役立つし。
- シゲト
- だったら問題無いんじゃ……
- サイ
- さっき自分で言ったろ?「バッテリーがギリギリだ」って。
- 他にも理由があるし。
- シゲト
- 俺にも判る。お金がすごーく・・・
- サイ
- いや、実は発振機自体はビームサーベルの延長だから手が届かない訳じゃない。
- 純粋に武装との相性の問題だな。
- シゲト
- 相性?
- サイ
- そう。今日はソコのところを説明するか。
C,Eでの矛と盾[]
- サイ
- モビルスーツの携行武器で、思い付く物を上げてごらん。
- シゲト
- えーと、バルルス重・・・
- サイ
- 誰が細かいメーカーまで言えって言ったよ?
- 大雑把な区分けで良いから。
- シゲト
- う。なら……ビームライフル、実弾ライフル、ビームサーベル、
- 対艦刀、アーマーシュナイダー、インパクトバイスに破砕球ミョルニル。こんなもんか?
- サイ
- な、なんかへんなモンも混じってるな……
- まあいいか。で、今言ったのを二つのグループに分けるとしたら、何をもって分ける?
- シゲト
- 熱量兵器と質量兵器だろ。
- サイ
- 当然、ソレによって防御方法が違うのは前回のフェイズシフト装甲の時に話したよな?
- シゲト
- フェイズシフトは質量兵器に、ラミネート装甲は熱量兵器に有効なんだよな。
- サイ
- そう。逆に、フェイズシフトは熱が溜まりやすいんで熱量兵器が有効だって前回も言ったけど、
- ラミネート装甲は質量兵器が苦手なんだよ。
- ビームとかの熱線が照射されると、熱伝導率の高さを利用して機体全体で熱を受ける事で
- 単位面積辺りに受ける熱量を下げると同時に排熱システムで溜まった熱を逃がし、
- さらに、ラミネート自体が蒸散して熱を奪うんだ。だから、物理的な衝撃にはそんなに強くない。
- まあ、実際のところは通常装甲に組み込んである補助機能って感じなんで、
- 別に実弾が当ったからと言ってボコボコ穴が開く訳じゃないけど。
- シゲト
- 実弾が当るとラミネート装甲としての機能が削がれる訳か・・・
- アンチビーム処理ってラミネート装甲だけ?
- サイ
- 他にはオーブ製の機体に多く装備されてる、そのものズバリなアンチビームシールドってのも有る。
- 盾の表面に微細なトレッドが刻んであって、コレがビームとかを乱反射させる事で
- ビームの焦点を安定化させないんだ。
- 更に、熱が溜まったとしても、その熱を使って振動する構造になってて、
- 熱エネルギーを運動エネルギーへ置換えると同時に乱反射も激しくなるんで、ますますビームの焦点があわなくなる。
- で、結果、熱破壊を防ぐわけだ。
- シゲト
- で、なんでそれを俺達が使ってないかと言うと……
- サイ
- 別に高いからじゃない!
- 単に統一連合周りにしか出まわってないだけだ!
- 構造上金属疲労起しやすいから、基本は使い捨て装備なんで、単価は結構安く抑えてあるんだけどな。
- 俺達の場合は統一連合御用達、って事に抵抗がある人間が多いのも理由の一つだけど。
- シゲト
- まあ、ラミネート装甲もアンチビームシールドも能力に差はないわけだし。
- サイ
- まだまだだな。
- シゲト
- ど、どう言うことさ?
- サイ
- ラミネートは排熱が重要なんだ。その能力を越える熱を受けると照射された箇所が溶解する。
- ラミネート装甲が有効に機能する為には、機体に最初から「ラミネート装甲を装備した」状態で
- 設計しないとダメなんだよ。
- 対して、アンチビームシールドは機体そのものの能力は全然関係ない。
- シールドの部材が勝手に防いでくれる訳だからな
- シゲト
- うん。ソレは判る。サイ兄、なんか奥歯に物が挟まった言い方だなぁ……
- サイ
- おいおい、まだ気づかないか?
- つまり、ラミネート装甲の防御力を上げるためには、機体そのものに手を入れなくちゃならない。
- 逆に言うと、手の入れ様によっては向上できる余地がある、って事なんだ。
- 対して、アンチビームシールドはその必要がない。と言うより向上『出来ない』んだ。
- どんな機体でも装備できて一定の防御力を得られるけど、それ以上は向上しないのさ。
- シゲト
- あ!なるほど、アンチビームシールド二枚重ねても、ビームの撹乱効率が二倍になる訳じゃないもんな。
- サイ
- そう言うこと。で、さっきも言ったけどそれぞれに欠点が有るんで、その穴を突く様に色んな兵装が有る訳さ。
- シゲト
- 熱線兵器と実弾兵器の使い分けか。
- なるほど、複合兵装が多いのはそう言うことなのか。
- サイ
- ビームライフルを連合がGATシリーズでMS携行可能なサイズにするのに成功した頃は
- 秘密兵器に近い扱いだったけど、今じゃ俺達みたいな貧乏所帯でも当たり前の兵装だからな。
- そうじゃなきゃ、今ごろフェイズシフト装甲持ちに叩きのめされてるよ。
- シゲト
- ありがとうビームライフル。
- サイ
- で、実弾と熱線の両方を防げる防御として開発されたのが、
- 光波防御帯を始めとするビームシールドの類さ。
- 旧ユーラシア連邦のアルテミス宇宙要塞が「難攻不落のアルテミスの傘」
- と言われてたのは、その光波防御帯から来てる訳だ。
- 守備隊の慢心から3回ほど壊滅したけどあの要塞。
- シゲト
- 「難攻不落だったアルテミスの傘」だよなぁ。
- 小さかったからうろ覚えだけど、なんかショボいと思ったよ。
- サイ
- その言い方も酷いだろ。まあ、1回目の陥落の時は俺も被害にあったんだけどな。
- シゲト
- 嫌な経験ばっかだね、サイ兄って。
- サイ
- で、その「アルテミスの傘」をモビルスーツに搭載したのが
- ハイペリオンやドレッドノートのアルミューレ・リュミエール。
- モノフェイズ光波シールドって言って、傘の内側から攻撃できるんだ。
- シゲト
- ソレも大概反則だよなぁ。やりたい放題じゃん。
- 原理はどうなってるんだろ?
- サイ
- ドレッドノートをミハシラで見かけたことがあって、
- ちょっと触ったんだけど判らなかったよ。死にかけたってのに。
- シゲト
- (土下座……)
- サイ
- いま「土下座」って連想しただろ!?
- ドレッドノートのコンソール触ったら、パイロットに
- ナイフで喉掻き切られそうになって、そのまま腕を捻じり上げられて放り投げられただけだ!
- モビルスーツを土下座させた訳じゃない!
- シゲト
- ソレはソレで壮絶だなぁ。つか、そのパイロットも酷いヤツだよな。
- シゲト
- 危なッ!ヤバいんじゃないかそのパイロット?!
- サイ
- それは置いといて。
- 一度、モビルスーツに搭載できるモデルが登場すれば、後は各陣営で同系統の装備を開発する訳だ。
- で、スクリーミング・ニンバスとか、ビームシールドとかが開発されて現在に至る、と。
- シゲト
- なるほど。でも、なんでビームシールドが標準装備にならなかったんだ?
- サイ
- まあ、ビームサーベルを点灯しっぱなしにしてるようなもんだから、燃費は良く無いからな。
- あと、しっかり対処法が編み出されてるし。
- シゲト
- え!?
- サイ
- サーペント・テールの隊長が発見したんだが、光波防御帯って
- アンチビーム処理さえしておけばあっさり突破できるんだ。
- シゲト
- うーむ。コロンブスの卵だな。
- シゲト
- 了解、サイ兄~
~次の日~
- ユウナ
- で、新型ビームシールド。使い勝手はどうだった?
- シゲト
- え~、あの、その……
- ユウナ
- え……僕、『あの人』に「詳細かつ予想も付かない素晴らしい報告してみせる!」
- って大見得切って無理に借りてきたんだけど……どうしよう?